2014年7月20日日曜日

最高裁の『外国人生活保護』に対する新判断について(2) ~第二審判決から最高裁判決まで~

続いて第二審判決。

一審で主張の殆ど全てを棄却された原告(在日中国人女性)側が控訴した結果、どうなったかと言うと……

二審・福岡高裁
 原告(在日中国人女性)勝訴 被告(大分市)敗訴

完全に逆転した


永住外国人生活保護(福岡高裁)【平成22(行コ)38号 生活保護開始決定義務付け等請求控訴事件】

内容は以下の通り。
  • 生活保護法の対象は法的には『日本国民のみ』だが様々な要因により『準用』されているので、永住外国人にも申請権及び受給権は有る
  • (憲法第25条に関する言及は無し)
  • (憲法第14条に関する言及は無し)
  • (国際人権規約A規約に関する言及は無し)
  • 申請権及び受給権があるので法的保護の対象であり、大分市の申請却下は『行政処分』である。その為、大分市の行為は違法。
という論点をほぼ一点に絞り込んだ判決となった。

では理由を説明しよう。

(理由1)

先ず、1954年(昭和29年)の【生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について】(昭和29年5月8日 社発第382号 厚生省社会局長通知)により、外国人にも生活保護法が『準用』される事となった。
次に、1981年(昭和56年)5月27日衆議院外務委員会第1号(発言番号17番以降が該当)で、難民条約批准に伴う国籍条項問題が起こる。国民年金等では撤廃されたが、生活保護法では入管法第5条1項第3号の上陸拒否事由との絡みで、法改正するには問題が大きい』とされた。然し実質的に日本国民も外国人も同じ取り扱いで生活保護を実施しているから問題ない』との答弁がある。
更に、1990年(平成2年)10月に準用対象が『永住外国人』に限定されたのは、国が一定の範囲内で難民条約等の国際法及び国内公法上の義務を認めたものと言える。
よって、通知の文言に関わらず、一定範囲の外国人も生活保護法の準用による法的保護の対象になるものと解するのが相当。
つまり、永住外国人には生活保護の申請権及び受給権が有るものと見做される。

(理由2~4省略)


(理由5)

生活保護法の『準用』対象であり、上記国会答弁でも『実質的に日本人と同じである』との事なので『法的保護』の対象と言える。つまりは生活保護の申請却下は、法に基づき行政権を作用させる『処分』そのものである為に、行政審査の対象にはならないとして棄却した大分市の行為は違法行為に他ならない。


以上が理由となる。

一審の地裁判決に比較してかなり焦点を絞り込んだ判決文である為、正直内容の薄さが目立ってしまう。憲法に関する見解がない事で、一審での『反しない』とされるものがそのままになり、矛盾を来している様にすら思える。それだけではなく国際人権規約A規約への言及も無いのに、【国が一定の範囲内で難民条約等の国際法及び国内公法上の義務を認めたものと言える】と言われても……という戸惑いも生じる。




さて、この二審判決を受けて大分市は上告した。

最高裁での審理の殆どは『書類の精査』で終わる。何も問題が無ければ、そのまま二審判決を支持して『上告棄却』となる事が多い。だが逆に言うならば、最高裁で『弁論』が開かれるという事は『二審判決』に何か問題が有るという事になる。『弁論が開かれる場合、二審判決の見直しの公算が高い』と言われるのはこの為である。


6月27日に双方の意見を聞く弁論が開かれ、7月18日に最高裁判決が下された。
その結果……


最高裁
 被告(大分市)勝訴 原告(在日中国人女性)敗訴


再度逆転した
つまり、二審判決に法令解釈上の誤りが有った訳である。

ちなみに、日本の裁判は三審制なので最高裁判決は『確定判決』となり、類似案件の裁判の『判例』となる。


では、二審の法令解釈の一体何処が間違っていたのか。
この場合の判決は、『原審(つまり間違っているとした二審判決)の◯◯部分を破棄する』というシンプル極まりない文章になる。そして続く理由も『何がどうして間違っているか』しか書かれない。

最高裁の判決文は未だに公開されていないのだが、TBSラジオの【萩上チキのSession22】という番組のスタッフ様がテキストに書き起こして下さったので、有り難く利用させていただく。
この場を借りて感謝の意を捧げたい。



永住外国人生活保護(最高裁)【平成24(行ヒ)45号 生活保護開始決定義務付け等請求上告事件】
魚拓


  • 生活保護法の対象は『日本国民』のみ。外国人は適用範囲外。


何故こうなるのか。そして、(1)で前述した様な【塩見訴訟】【堀木訴訟】との関係は何か。詳細な解説は(3)で行おう。

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