さて、今回の一連の国籍法記事についてコメントが来ておりました。ありがとうございます m(__)m 内容は予想通りの反論だった訳ですが……(ニガワラ
まぁ、再反論するにも少し長文になりそうですので、新規に記事を立てました。
☆そにょ4のコメントへの再反論
先ず認知の件ですが、これはハッキリ言って私の記述ミスです。読者の方におかれましては申し訳ありませんでした。
あそこは『~により嫡出子となる』ではなく『~により実子となる』と書かなくてはなりませんでした。嫡出子となる場合は、認知案件の中でも『準正』を経た場合のみです。つまり、『認知準正』(胎児認知を経た出産の後、両親が婚姻)か『婚姻準正』(生後認知の後に両親が婚姻)なのです。そにょ1で『準正』の件やってたのに大ポカしました…… orz うっうー 訂正しておきます……
次に扶養の件ですが、確かに『生活保持扶養義務』は民法の範囲内ですので、行政が強制介入することは出来ません。ですが、この義務が発生することにより、別側面からの利点が出てきます。それは『生活保護』に関してです。
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法 (明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。
これは生活保護法からの引用ですが、この第四条二項に注目して下さい。扶養義務者の扶養が最優先であると書かれています。実際に、扶養義務者が扶養出来るかは別問題なのです。扶養義務者による扶養が最優先という点が大事なのです。この扶養義務者には、扶養の意思があるか否か、扶養能力の有無がどうなっているかを確認しなくてはなりません。ですから、地方自治体は確認書を郵送します。この時点で、認知した日本人父に連絡がいく訳です。その父が住所不定のホームレス並びに失踪中の行方不明者でない限りは、必ず連絡が入ります。ですから、『認知後の同居は無い』としても、父方には行政よりの確認が入る訳です。これにより、『認知だけするけど、後は知らないよ』って言い訳が効き難くなります。最初の一人目ならともかく、複数の子(しかも、母は別人)を認知するという訳にはいかないでしょう。幾らなんでも『複数認知だけしておいて、全員に対し扶養の意思無し』では、流石に行政が動き出しますよ。疑われないと思っているなら、その人はかなりの楽天家か日本政府を馬鹿にしすぎてますね。
☆そにょ5のコメントへの再反論
先ず、婚姻要件の廃止により国籍取得が容易になったと言われていますが…… 単純に手続上の問題にしても、偽装結婚の二倍~三倍の手間が掛かりますよ? 偽装結婚での『提出書類』は婚姻届の一通だけ、『提出先』は地方自治体一ヶ所のみです。偽装認知での『提出書類』は認知届、国籍取得届、子が国内在住なら国籍取得取得証明書の計二通か三通、『提出先』は地方自治体、法務局(または在外公館)、それに子が国内在住であれば地方自治体にもう一回。で、計二ヶ所か三ヶ所です。……まぁ、これだけでも発覚リスクは格段に高まるので、抑止になると思うんですが。これが詭弁と言うならば、別角度から責めてみましょうか。
基本として、『認知による親子関係の確立』というのは『その子を実子とし、自分の戸籍に迎え入れること』ですから、一度結べば解消することは出来ません。認知した日本人父の戸籍には『認知事実』が記載されます。例え転籍によって『認知事項の記載』が消えたとしても、『子』という記述は一生涯消えません。そして子供の方にとっても、父は生涯父であり続けます。この社会的関係性は決して失われません。外国人母も外国籍ではあるものの、その名前は戸籍の『子の母』欄に記載されます。よって、父の戸籍は『筆頭者:父』と『子』の戸籍になり、『子』の記載事項中の『母』の欄には外国人母の名前が載ります。この部分は一生消えませんし、扶養義務等の関係性も消えません。(特別養子縁組で消す方法もあるにはあるのですが、子供が六歳未満でないと無理なので、かなり限られた事例になります。しかし、日本国籍取得だけなら簡易帰化-国籍法第六条~第八条-もありますので、こんな特別養子縁組を行なうメリットがないです)
加えて、この日本人の子を持つ外国人母の在留資格は『定住者(一年期限)』となります。(根拠:平成八年七月三十日付法務省入国管理局長通達『日本人の実子を扶養する外国人親の取扱いについて』 3-(2)日本人の実子を扶養する外国人親の在留資格について) 在留には一年毎の資格更新が必須ですし、更にはこの更新時に『養育・監護の事実が無ければ取消』という厳しい制約があったりします。無論、未成年の子を残しての強制退去とは一概には言えないでしょうから、特別在留許可の情状酌量要因にはなりますが。
平成8年7月30日
法務省入国管理局日本人の実子を扶養する外国人親の取扱について
1 現行取扱い及び本通達発出の背景日本人の実子を扶養する外国人親については、法務大臣が諸般の事情を考慮して「定住者」と認めることが相当と判断したときには、ケースバイケースで当該外国人親の在留を認めてきたところ、最近、この種の事案が増加し、統一的な取扱いを定める必要性が生じていた。
2 趣旨及び目的
日本人の実子としての身分を有する未成年者が、我が国で安定した生活を営むことができるようにするため、その扶養者たる外国人親の在留についても、なお一層の配慮が必要であるとの観点から、入国在留審査の取扱いを定めたものである。
3 今後の取扱い
(1)日本人の実子を扶養する外国人親の在留資格について 未成年かつ未婚の実子を扶養するため本邦在留を希望する外国人親については、その親子関係、当該外国人が当該実子の親権者であること、現に当該実子を養育、監護していることが確認できれば、「定住者」(1年)への在留資格の変更を許可する。
なお、日本人の実子とは、嫡出、非嫡出を問わず、子の出生時点においてその父または母が日本国籍を有しているものをいう。実子の日本国籍の有無は問わないが、日本人父から認知されていることが必要である。(2)在留資格変更後の在留期間更新の取扱い
実子が未だ養育、監護者を必要とする時期において、在留期間の更新申請時に実子の養育、監護の事実が認められない場合は、原則として同更新を許可しない。(3)提出書類
(ア)身分関係を証明する資料
(イ)親権を行うものであることを証する書類
(ウ)日本人実子の養育状況に関する書類
(エ)扶養者の職業および収入に関する書類
(オ)本邦に居住する身元保証人の身元保証書
この外国人は『母』であっても『日本国民の配偶者等』(日本人の配偶者等とは『日本人の配偶者である外国人』『日本人の子供として生まれた外国人』『日本人の特別養子となった外国人』を指します)ではないので、帰化に際しての要件緩和はありません。と言うことは、通常の国籍法第五条一項の条件が全て要求されます。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法 施行の日以後において、日本国憲法 又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
2 法務大臣は、外国人がその意思にかかわらずその国籍を失うことができない場合において、日本国民との親族関係又は境遇につき特別の事情があると認めるときは、その者が前項第五号に掲げる条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。
この第五条一項四号を見て下さい。仮にこの外国人母が生活保護を受けている(在留資格『定住者』なので、生活保護法は準用され適用される 根拠:昭和二十九年五月八日付社発第三八二号厚生省社会局長通知『生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について』)とすれば、『生活保護を受けている限りは帰化は出来ない』のです。要は日本人になれないのです。帰化要件を満たしていたとしても、通常の外国人と条件は一切同じです。子が日本人になっても、母は通常の外国人同様の方法でしか日本人になれません。何処に偽装認知のメリットが?
更に、この母の親族を日本に呼び寄せたとしても、通常の外国人と同じように入管の審査がありますし、在留資格にも特例はありませんよ? 中国残留孤児の親族の呼び寄せとは違いますからね。特例が記述されている、平成二年五月二十四日付法務省告示第百三十二号『出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件』にも、そんな項目はありません。
……えーと、反対派の根拠の一つであった『鼠算式の偽日本人拡大』は何処へ?
それに対して、結婚の場合は飽く迄も『婚姻という法的手続』でしかありません。単なる制度上の問題ですから、解消も自由です。離婚届という紙切れ一枚さえあれば、その配偶者との法的関連性は消失します。(慰謝料や養育費などの金銭問題は別として) 加えて、在留資格が『日本人の配偶者等』となりますので、帰化要件が大幅に緩和し、住所要件(国籍法第五条一項一号)が『五年』から『三年又は一年』に、能力要件(同法同条二号)が『二十才以上で、本国で成人として認められる者限定』から『二十才未満で、本国で未成年でも可』になります。(根拠:国籍法第七条) つまりは、一般の外国人に比べ帰化し易く、離婚してしまえば『社会的制約』が無くなり、簡単に独身の日本人になれるということです。……これ、どう考えても偽装結婚の方が楽だし、メリット有るんじゃね?
もう一つ、窓口での受理拒否が行われないだろうと言うことですが…… それは『地方自治体窓口』のことですよね? 『地方自治体』では書類さえそろっていれば、受理拒否はありません。書類に不備があれば拒否されますが。通常でも、受付した書類に不備がないかを確認して(その間は待たせる)、そうしてやっと受理する訳です。拒否の際に『~~の理由で不備がありますから、~~を直して下さい(又は~~を持ってきて下さい)』とするのは『指導』とされ、違法にはなりません。ただ単に『申請を却下します』『受理出来ません』と言ったら提訴されてしまいますが。
しかし『法務局』においてはそうではなく、今回の改正に伴い法務省令第七十三号『国籍法施行規則の一部を改正する省令』を出した上で『法務省民事局長通達』を出し、『窓口で疑義がある場合は、速やかに法務省民事局長へ報告すること』としており、何らかの理由をつけて『不備扱い』にすることが十二分に考えられます。また、受付後に疑義が生じた場合の事実確認を、各法務局に義務付けています。捜査関係各機関や入国管理局との連携も明示されています。
……それでも信用出来ないと言われたら、そうですかとしか言えない訳ですが。公務員、馬鹿にし過ぎじゃない?