2008年12月10日水曜日

国籍法の一部を改正する法律の問題について そにょ2~もうちょっと知りたい

では、そにょ2いきまーす。

 

☆最高裁の判決を詳しく。ネットにあるまとめの通り?

まとめ…… 最近見た中で最悪なのがこれ。

【最高裁判決について概略】
・日本人パパと外国人ママの間に生まれた子供(実子)について、学級会議で話し合うよ。

・国籍法3-1が「パパとママが結婚して認知してくれたから国籍あげる」っていうのは 憲法「国民は法の下に平等」の精神に違反じゃない?パパが認知してたら結婚してな くても国籍をあげてね。 (!?)
・その理由を説明するね。国籍法3-1が「パパとママが結婚して認知」した子に国籍を上げるのは、扶養監督の責務をもった両親に守られて生活安定してるから、国籍をあ げてもいいだろうと考えて作った法律だって思うわけ。当時の外国も似たような条項 設けてたってのもあるだろうね。
でもいまは、フリーセックスとか、核家族崩壊が流行ってるじゃない。だから結婚し てれば安定してるともいえないよね?それに他の国も結構アバウトな家族法が流行っ てるから、うちの国もそうしようと思うわけ。 いいよね? (!?)
・ぶっちゃけ「結婚してないけど認知されてる実子」が日本国籍もらえないのは、「結 婚してて認知されてる実子」が国籍貰えるのに比べて、本人努力に関係なしにハンデ 受けてて、なんか差別っぽいしー。ルール変えようね。
・「そういう子は、簡易帰化しやすくしてるじゃん」って?いやいや、(前科とか)問題あると帰化認められないしね~。これ差別っぽいからね。 (!?)
大丈夫、俺の言うことにあいつ等(国会)逆らえないから。

何この恣意的で悪意に満ちたまとめは! 最高裁での裁判を『学級会議で話し合う』とするところからして、悪意に満ち溢れてる! 反対する為には曲解も歪曲も虚言も辞さないってことか……

一つ一つ反論していきましょうかね。判決の原文挙げて。

 

先ず、前後しちゃいますが『理由』のところから行きましょう。国籍法に『準正取得』が加わった理由の判決文はこれ。

このような規定が設けられた主な理由は、日本国民である父が出生後に認知した子については、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得することによって、日本国民である父との生活の一体化が生じ、家族生活を通じた我が国社会との密接な結び付きが生ずることから、日本国籍の取得を認めることが相当であるという点にあるものと解される。また、上記国籍法改正の当時には、父母両系血統主義を採用する国には、自国民である父の子について認知だけでなく準正のあった場合に限り自国籍の取得を認める国が多かったことも、本件区別が合理的なものとして設けられた理由であると解される。

この改正は昭和五十九年法律第四十五号によって行なわれました。それまでは準正取得が無く、日本人男性と外国人女性の子の日本国籍取得要件は、出産前に『両親が婚姻している』か『父親に認知してもらう』かのどちらかだけ。つまり『出生取得』のみだったのです。産まれてしまったら、日本国籍取得は絶対に不可能でした。婚姻か胎児認知が遅れただけで、その子供は一生『日本人』にはなれなかったのです。

出生 → 嫡出子&非嫡出子

産後 → ×

だったのですよ。今回の改正法が通る以前よりもアンバランスでした。そこで、日本人男性と外国人女性の間の子が持つ『出生取得権利』との均衡を図る為に『準正取得権利』が設けられたのです。これを認めるにあたって、創設理由としては次の通りです。

『準正した子』とはつまり『父母が婚姻している』訳なので、家族を通した日本社会とのつながりが濃いのだから、日本国籍取得に相応しいと思われる。当時の国外情勢から言っても、準正取得は妥当であり合理的である。

『扶養監督~』だとか『安定した生活~』だとかは一切書いてありません!(嘘1)

更にその後の改定理由のところですが、判決文はこれ。少々長いです。

しかしながら、その後、我が国における社会的、経済的環境等の変化に伴って、夫婦共同生活の在り方を含む家族生活や親子関係に関する意識も一様ではなくなってきており、今日では、出生数に占める非嫡出子の割合が増加するなど、家族生活や親子関係の実態も変化し多様化してきている。このような社会通念及び社会的状況の変化に加えて、近年、我が国の国際化の進展に伴い国際的交流が増大することにより、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生する子が増加しているところ、両親の一方のみが日本国民である場合には、同居の有無など家族生活の実態においても、法律上の婚姻やそれを背景とした親子関係の在り方についての認識においても、両親が日本国民である場合と比べてより複雑多様な面があり、その子と我が国との結び付きの強弱を両親が法律上の婚姻をしているか否かをもって直ちに測ることはできない。これらのことを考慮すれば、日本国民である父が日本国民でない母と法律上の婚姻をしたことをもって、初めて子に日本国籍を与えるに足りるだけの我が国との密接な結び付きが認められるものとすることは、今日では必ずしも家族生活等の実態に適合するものということはできない。また、諸外国においては、非嫡出子に対する法的な差別的取扱いを解消する方向にあることがうかがわれ、我が国が批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約及び児童の権利に関する条約にも、児童が出生によっていかなる差別も受けないとする趣旨の規定が存する。さらに、国籍法3条1項の規定が設けられた後、自国民である父の非嫡出子について準正を国籍取得の要件としていた多くの国において、今日までに、認知等により自国民との父子関係の成立が認められた場合にはそれだけで自国籍の取得を認める旨の法改正が行われている。以上のような我が国を取り巻く国内的、国際的な社会的環境等の変化に照らしてみると、準正を出生後における届出による日本国籍取得の要件としておくことについて、前記の立法目的との間に合理的関連性を見いだすことがもはや難しくなっているというべきである。

ここで五十九年の準正取得加筆時とは社会背景が大きく変わってきている、と言っています。

国際交流により在留外国人が増し、日本人父と外国人母の子が増えていること。その結果、当該外国人の文化・生活の影響を受け、旧来の父親を中心とした家族制度だけでは『日本社会とのつながり』が図れなくなっていること。国際人権B規約や児童の権利条約に批准したことで、児童の扱いが平等でなくてはならないという国際潮流に乗ったこと。日本と同じ『準正取得』であった国々も『認知取得』の流れに傾いていること。

『フリーセックス云々で結婚してれば安定しているとは限らない』って何それ。そんなこと書いてないし、表現に目を瞑っても『安定』なんかは問題になってない。(嘘2) 『他の国もやってるから』のように、主体性無しに流されたのではない。批准した国際法を鑑みた結果だ!(嘘3)

 

国際人権B規約

正式名称『市民的及び政治的権利に関する国際規約』 別名『自由権規約』

一九七六年発効 一九七九年日本批准

児童の権利条約

正式名称『児童の権利に関する条約』

一九八九年第四四回国連総会採択 一九九〇年発効 一九九四年日本批准

 

次の『ぶっちゃけ~』の段。判決文はこちら。

国籍法は、前記のとおり、父母両系血統主義を採用し、日本国民である父又は母との法律上の親子関係があることをもって我が国との密接な結び付きがあるものとして日本国籍を付与するという立場に立って、出生の時に父又は母のいずれかが日本国民であるときには子が日本国籍を取得するものとしている(2条1号)。その結果、日本国民である父又は母の嫡出子として出生した子はもとより、日本国民である父から胎児認知された非嫡出子及び日本国民である母の非嫡出子も、生来的に日本国籍を取得することとなるところ、同じく日本国民を血統上の親として出生し、法律上の親子関係を生じた子であるにもかかわらず、日本国民である父から出生後に認知された子のうち準正により嫡出子たる身分を取得しないものに限っては、生来的に日本国籍を取得しないのみならず、同法3条1項所定の届出により日本国籍を取得することもできないことになる。このような区別の結果、日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子のみが、日本国籍の取得について著しい差別的取扱いを受けているものといわざるを得ない。日本国籍の取得が、前記のとおり、我が国において基本的人権の保障等を受ける上で重大な意味を持つものであることにかんがみれば、以上のような差別的取扱いによって子の被る不利益は看過し難いものというべきであり、このような差別的取扱いについては、前記の立法目的との間に合理的関連性を見いだし難いといわざるを得ない。とりわけ、日本国民である父から胎児認知された子と出生後に認知された子との間においては、日本国民である父との家族生活を通じた我が国社会との結び付きの程度に一般的な差異が存するとは考え難く、日本国籍の取得に関して上記の区別を設けることの合理性を我が国社会との結び付きの程度という観点から説明することは困難である。また、父母両系血統主義を採用する国籍法の下で、日本国民である母の非嫡出子が出生により日本国籍を取得するにもかかわらず、日本国民である父から出生後に認知されたにとどまる非嫡出子が届出による日本国籍の取得すら認められないことには、両性の平等という観点からみてその基本的立場に沿わないところがあるというべきである。

つまり……

父母の婚姻、もしくは父の胎児認知という『児童本人ではどうにもならない事』によって、同じ『日本人の父を持つ子』の間に差別が生じていること。一方は『日本人』でありながら、もう一方は『外国人』のままだということ。父母の婚姻如何に係わらず、日本社会への浸透においては明確な差異が存在しないであろうこと。(ぶっちゃけ、父母が婚姻してても浮く奴は浮く。父母が結婚してなくても解け込む奴は解け込む) 国籍法は父母両系で平等なはずなのに、日本人母の非嫡出子は取得出来て、日本人父の非嫡出子は取得出来ないのはおかしいこと。

として、飽く迄も『法の平等原則』と『批准国際法の影響』により『違憲であり改定するべきである』と言っているんです。『母優勢』である現状に異を唱えているのです。国籍法は、父と母の両者の立場が等しいという原則に基づいて作られていますから。

『結婚していない男女の実子』(非嫡出子)であっても、母が日本人なら『日本国籍を生来的に取得する』のです。(嘘4) 準正も何も解ってないんじゃないだろうか、この馬鹿。

 

次の『簡易帰化~』の段に移りますが…… こちらですね。

日本国民である父と日本国民でない母との間に出生し、父から出生後に認知された子についても、国籍法8条1号所定の簡易帰化により日本国籍を取得するみちが開かれている。しかしながら、帰化は法務大臣の裁量行為であり、同号所定の条件を満たす者であっても当然に日本国籍を取得するわけではないから、これを届出による日本国籍の取得に代わるものとみることにより、本件区別が前記立法目的との間の合理的関連性を欠くものでないということはできない。なお、日本国民である父の認知によって準正を待たずに日本国籍の取得を認めた場合に、国籍取得のための仮装認知がされるおそれがあるから、このような仮装行為による国籍取得を防止する必要があるということも、本件区別が設けられた理由の一つであると解される。しかし、そのようなおそれがあるとしても、父母の婚姻により子が嫡出子たる身分を取得することを日本国籍取得の要件とすることが、仮装行為による国籍取得の防止の要請との間において必ずしも合理的関連性を有するものとはいい難く、上記オの結論を覆す理由とすることは困難である。

この最後の『上記オの結論』とは『日本と密接な関係にある者にのみ国籍を与えるという立法目的と、現在の運用実態が掛け離れている』というものです。(判決原文参照) ここでは『簡易帰化という道もあるが、日本人母の子は産まれながらに自動的に日本国籍を持てるので、申請しなければならない帰化は代わりにはならない』と言っています。

日本人『母』の子 → 如何なる場合でも、自働的に出生取得

日本人『父』の子 → 事前婚姻/胎児認知の場合のみ自働的に出生取得、それ以外は準正取得

『簡易帰化』は、この差を埋めるだけの代替品にはならない、と言っているのです。父母の立場が等しいはずなのに、この差は何でしょう? 決して『帰化は問題があると認められないから』という問題ではないのです。『自動的な取得』と『申請して認可合否を待ち、通れば取得』とでは『釣り合わない』と言っているのです!(嘘5)

 

で、最後に元に戻って『国籍法~』の段。ここは…… これがふさわしいかな? 最初の方です。

原判決等上告人らは、国籍法3条1項のうち、日本国民である父の非嫡出子について父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得したことを日本国籍取得の要件とした部分が憲法14条1項に違反するとして、上告人らが法務大臣あてに国籍取得届を提出したことにより日本国籍を取得した旨を主張した。これに対し、原判決は、仮に国籍法3条1項のうち上記の要件を定めた部分のみが憲法14条1項に違反し、無効であったとしても、そのことから、日本国民である父の非嫡出子が認知と届出のみによって日本国籍を取得し得るものと解することは、法解釈の名の下に、実質的に国籍法に定めのない国籍取得の要件を創設するものにほかならず、裁判所がこのような立法作用を行うことは違憲立法審査権の限界を逸脱するものであって許されないし、また、国籍法3条1項の趣旨からすると、上記の要件を定めた部分が憲法14条1項に違反して無効であるとすれば、国籍法3条1項全体が無効となると解するのが相当であり、その場合、出生後に日本国民である父から認知されたにとどまる子が日本国籍を取得する制度が創設されるわけではないから、憲法14条1項に違反することにより国籍法3条1項の規定の一部又は全部が無効であったとしても、上告人らは法務大臣に対する届出により日本国籍を取得することはできないとして、上告人らの請求を棄却した。

ここでは『国籍法第三条一項の中で或る一部分だけが違憲だとするならば、それは第三条一項全体が無効になる』と言っています。だから『第三条一項自体が無くなった上で請求通りに国籍を与えたりすれば、それは裁判所が法を作ることを意味してしまう。だから却下』と 『違憲だけど、要求は通らないよ』 という結果に終わっています。

そにょ1の記事を読んだ方は解ると思いますが…… あの概要とかいう文の馬鹿さ加減が。今回の争点は『実子か否か』ではありません。『日本人母の非嫡出子と、日本人父の非嫡出子の持つ権利の差』です。日本国憲法第十四条一項の『平等』に違反しているのは、日本人男性を父に持つ子の『日本国籍取得権』と、日本人女性を母に持つ子の『日本国籍取得権』です。

 

 

 

 

今回はここまで。

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