2008年12月17日水曜日

国籍法の一部を改正する法律の問題について そにょ5~問題とされている点についての反論の2

さて第5回。


☆『国籍取得』について


 前に引用したwikiによりますと

改正法では、20歳未満の外国人なら、お金に困ってる人に認知届を書いて貰うだけで、簡単に日本国籍が取得できます。

とか書かれていますが…… これは全くの嘘です。事務手続きですが、これ、日本国籍取得するまでには三回公的機関に行かなきゃなりません。


1.認知した者(今回の場合日本人父)が、本籍地又は居住地の地方自治体に『認知届』提出(戸籍法第二十五条一項同法第二十七条の二一項

2.認知された者(この場合は子。子が15才未満なら法定代理人、15才以上20才未満なら子供本人)が、法務省・地方法務局・在外公館に『国籍取得届』提出(国籍法施行規則第一条一項同法同条三項国籍法第十八条

3.国籍を得た者の親権者(この場合は親。父でも母でも可)が、本籍地又は居住地の地方自治体に『国籍を取得した旨の届』提出(戸籍法第三十一条一項同法百二条一項


 法的に、受付窓口では『申請却下』は出来ません。が、『受理拒否』なら出来ます。しかも、理由を告げる義務はありません。偽装で、この三重のチェックを潜り抜けられると思いますか? 何処かで一度でも怪しまれたらアウトですよ? 更に、もしも複数人を偽装認知する場合、何回も顔を出す訳ですから、怪しさ大爆発です。一体、何処が簡単なんでしょうか?



☆『偽装取締まりと罰則』について


 偽装の取締まりですがwikiでは『不可能』と断言しちゃってます。その理由として『日本の認知制度が厳密な事実主義ではなく、意思主義が介入していること』を挙げています。つまり『血の繋がり一辺倒じゃなくて、血がつながってない者でも、親の意思さえあれば認知出来る』と言っています。……まぁ確かに『厳密な事実主義』ではないことは事実です。が、その場合でも『長年に渡る生活実態があること』が、意思的認知を許可する基準となっているのですよ? 長年同居して、実親子同然の生活をしてきた……などですね、この場合。ですから、いきなり初対面に等しい血縁の無い子供を認知することは不可能です。認可されません。

次に罰則ですが、これを『第三条第一項の規定による届出をする場合において、虚偽の届出をした者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。』(国籍法改正案第二十条一項)が単独で完結するもの、と思っている人が多いです。ですが実際は、以下の複数の罪状となります。


1.地方自治体への『虚偽の認知届』提出として『公正証書原本不実記載等』(刑法百五十七条一項)により、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金

2.法務省・地方法務局・在外公館への『虚偽の国籍取得届』提出として『国籍法違反』(国籍法改正案第二十条一項)により、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金

3.地方自治体への『虚偽の国籍を取得した旨の届』提出として『公正証書原本不実記載等』(刑法百五十七条一項)により、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金


 さて、この複数の罪は刑法第四十五条によって『併合罪』となりますが、刑罰は単純に加算(加重、と言います)はされません。同法第四十七条によって『懲役』の上限が決まるからです。同法第四十七条には


(有期の懲役及び禁錮の加重)

第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。


と、あります。ですから『公正証書原本不実記載等』(刑法百五十七条一項)の『懲役五年』が最長で、これの二分の一が加算されることになります。よって、五年+二年六ヶ月=七年六ヶ月で『懲役七年六ヶ月』となります。これは三つの罪の懲役の合計値(五年+一年+五年=十一年)を超過してないのでオッケーとなります。罰金刑の方には加重規定がないので、単純に加算します。よって、五十万円+二十万円+五十万円=百二十万円で『罰金百二十万円』となります。つまり、併合の結果として


偽装認知の発覚者への刑罰

七年六ヶ月以下の懲役又は百二十万円以下の罰金



となるのです。


☆『偽装対策』について


 反対派の人は、やれDNA鑑定必須にしろだ、やれ国籍法内に偽装対策明記しろだの言ってますが……

 えーとですね。先ず『国籍法は、誰が日本国籍を取得出来るかを定めただけの法律』って事を理解して下さい。要は『国籍についての大枠』です。これ理解しないと話が出来ません。もう一つ、法体系を以下に示しますので、これも理解して下さい。


『憲法』≧『条約』>『法律』>『政令』>『省令』>『告示』>『通達』

※『憲法』>『条約』という解釈が主流ですが、私の個人的信念によりこっちw

※『政令』とは『内閣が下す命令』、『省令』とは『各省庁の大臣が下す命令』、『告示』とは『公共機関による法令補完情報(法規)の公開』、『通達』とは『公共機関内部における法令解釈・運用基準の提示』です。


 これは、上位であるほど『改正手続きの難度が上がる』のです。改正が困難ですから、あまり変えなくていいように『概略的』『抽象的』『観念的』になります。逆に、下位であるほど『改正手続きの難度が下がる』のです。改正が容易なので、すぐに変えられるため『詳細的』『具体的』『技術的』になります。これは絶対に押さえておいて下さい。

 さて、今回の『国籍法』関連で言うならば……


『法律』=『国籍法』

『省令』=『国籍法施行規則』


となります。つまり『法律』である国籍法『改正:難』『概略的』『抽象的』『観念的』で、『省令』である国籍法施行規則『改正:易』『詳細的』『具体的』『技術的』となる訳です。

 さて、ここから問題です。DNA鑑定というのは『観念』でしょうか、『技術』でしょうか? 偽装防止策というのは『概略』で良いものでしょうか、『詳細』が必要なものでしょうか? そうです。法体系から言えば『法律』ではなく『省令』に盛り込むべき内容なのです。『省令』でなくとも、新たに『告示』や『通達』が作られてもいいでしょう。時流や状況に合わせて、より容易に改正できるのですから。

 例えば、Aという『偽装防止策』を法律に盛り込んだとしましょう。もしも効果が無かったらどうするんですか? 今回は『行政違憲判決を受けた改正』だったので、早急に実行出来ましたが、通常は数ヶ月~数年掛けて国会で議論してからでないと改正は出来ないのです。その間、効果の無い『偽装防止策』をやり続けるんですか? 改正が何年先になるかも解らないまま? 法的効力も、法律の方が政令や省令よりも上です。つまり、政令で新たな対策としてBを採用しても、最優先は効果ゼロのAであり続けるということです。

 だからこそ、反対派の人たちの言う『偽装防止策が不十分だから改正反対』との叫びは無知蒙昧の戯言でしかないのですよ。